「老老介護」「認認介護」という介護現場の話は、ずいぶん前から聞いています。高齢者が高齢者を介護する、さらに認知症の家族を認知症の家族が介護する、つまり介護される人もする人も認知症という状況を言います。高齢化と核家族化が進んだ現在、高齢者だけの世帯も増えてきています。さらには、認知症の高齢者だけの世帯も増えてきていると思われます。
家族の介護力を考えていく中でさらに問題だと思われることの一つに「ヤングケアラー」があります。ヤングケアラーとは「障害や慢性疾患や病気、精神的問題や依存症などを抱える親や高齢の祖父母、兄弟姉妹や親戚に対して、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護や見守り、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子供や若者(ケアラーアクションネットワークから)」とあります。また「高齢者や障害者など、家族の中に介護を必要とする人が出てきたとき、働いている大人たちと比べて時間の融通が利く10代の若者たちが、介護要員としてあてにされてしまう傾向が強まっているように思います」と実態調査をされている成蹊大学文学部准教授・澁谷智子氏の報告があります。
これは高次脳機能障害者がいる家庭でも、同じことが起きていると思います。わが身に置き換えて考えると、主人が倒れて生活のために働かざるを得ない状況の中で、子どもたちの助けを借りることが多かったと思います。「家族で頑張って乗り切ろう!」と話し合い、子どもは、家のために役に立っている、お母さんを助けなきゃ、と健気に引き受けて頑張ってくれました。しかし辛かったこと、犠牲にしてきたことも多かったのだろうと、今更ながら申し訳なかったと反省しています。
また身近にもそういう子どもたちを見ることがあります。勉強やクラブ活動、友達と遊ぶ時間も減らし、さらに理解しにくい高次脳機能障害に向き合う日々、その大変さを語る人もいない状態の生活の中でさぞ疲れているだろうと思います。「私しかいないから」と頑張っていますが、「これから大学生活が始まったら、今迄みたいにはやっていけない。どうなるんだろう。」と、大学に受かった喜びと共に、のしかかる不安に本音を漏らしました。
多かれ少なかれ、子どもたちへの影響はあると思います。私たちでさえ高次脳機能障害の理解は難しいのに、その説明もちゃんとされないまま、介護の担い手になっている子どもたちに、家族会として、何らかの支援、せめて相談できるような仕組みは作れないかと考えています。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子