こーじ通信

No.91 根本的なリセットが必要
2017年10月

  8月27日にTKK発足15周年・NPO法人設立10周年『記念講演会』が開催されました。記念講演は、フジテレビ解説委員・キャスター、国際ジャーナリストの松本方哉氏の「突然妻が倒れたら~家族の視点から語る介護生活と社会の支え方~」という、奥様がクモ膜下出血で高次脳機能障害を負われた家族としての体験をお話しいただきました。そしてさらにジャーナリストらしい切り口で、日本の福祉の現状、特に高次脳機能障害者に対する支援について、鋭いご指摘があり、今後やらなければならないことまで言及されました。そこで出てきたのが、表題の「根本的なリセットが必要」という言葉でした。
  介護保険の認定評価に「高次脳機能障害」は無く、「認知症」で代替している現状を指摘されました。以前からお伝えしていますが、高次脳機能障害は介護認定では低く評価されることが多いのです。 その生活のしにくさは、認知症とはまた別のもので、正確に介護度を決めてもらう尺度がありません。松本氏は「認知症」と「高次脳機能障害」では名前負けをしているので、いっそのこと「高次脳機能症」に名称を変えたらどうか、とまでおっしゃいました。
  また2025年に来ると言われている「超少子超高齢」はこのままでいると「ゴジラ」が都市を破壊するように、日本の財政を破壊するであろうと、ゴジラ映画の一場面を映しながら、説明されました。高齢者の年齢も「昔より健康だから」とどんどん年齢を上げていく動きがあるが、テレビの世界では50歳以上を高齢者として考えているとのこと。その計算でいけば、2025年は50歳以上と50歳未満がちょうど半分になるそうです。乳幼児も高齢者の一人を支える数字になるということです。多少数字のマジックはあるかと思いますが、高齢化はどんどん進むことは現実問題です。認知症はさらに増加していくでしょう。松本氏は「その中で高次脳機能障害者は埋もれてしまう」と危機感を募らせています。そういう現状を俯瞰して束ねていくのは自治体職員である、とも言及しておられました。①障害福祉課に高次脳機能障害の専門職員を一人で良いから配置する。②職員は足で福祉現場を知る。(区の高次脳機能障害者の実数の把握など)③高次脳機能障害者への施設充実、を訴えられました。今からでも考え方を変えれば、社会は変えられる、そして「根本的なリセットが必要」との言葉が出ました。掘り起こせば、高次脳機能障害者の数は政治的人数になる、全国の当事者や家族を束ねることが急務!と力強い提言でした。さて私たちは何から始める?

                           高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子


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