こーじ通信

こーじ通信 No.01~No.05(こーじ通信のご案内)

No.05 夏を迎えて思うこと

 寝苦しい熱帯夜が続くシーズンになりました。『高次脳機能障害者』を抱える家族が、より疲れを感じる季節です。まわりの人が、海に山に、また海外へと出かけていく姿を羨む季節でもあります。たまには自分たちもと考えることもあります。

 障害を持っていても、健常人と同じレベルで行動を共にできる人を、知らず知らずに気持ちの中で比較している自分に気づき、また『高次脳機能障害』を持つ以前の家族の姿を考え、人知れず涙することもありました。

 子どもであれ、親であれ、連れ合いであれ、それぞれの関わりの中で、少しでも前の生活を取り戻したいと思うことは、贅沢なことでしょうか?自然で人間的な感情だと思います。医療の問題は学問的研究という時間が必要であることは、充分わかっていることですが、福祉の問題は基本的に人権の問題として単純に考えればいつでも施策として取り上げ、現行の制度に組み入れることには時間はかからないと思います。

 今回の東京都が行った『高次脳機能障害者の実態調査』に現れた数字から、全国的に推計すれば、最低約50,000人の『高次脳機能障害者』と、その介護にあたる人の100,000人以上の人が、福祉サービスを待っています。

 最近では、東京都の区・市では作業所などの利用において、『高次脳機能障害者』の場合には、障害・精神などの手帳がなくても受け入れるようにする等の施策も考えられているようです。各地方自治体でも一日も早くこのように、できることから福祉を考えられるように、国レベルの決断を願っています。障害の福祉は等級ではなく、「初めに障害ありき」の観点に立って考慮されるべきです。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄

No.04 高次脳機能障害者と家族の会のこれから

 発会から2年近くの時が流れ、会の目的の一つである「この障害に対する社会的な認知」については、当事から見れば格段の広がりを感じているのは私だけではないと思います。これは皆さんの日常における地道な努力の姿勢が、大きな力になって影響しているのだと思います。

 しかしその反面、世の中の景気に比例して福祉政策が少しずつ後退していることも事実です。そういう中で遅蒔きながら東京都はこの障害に目を向けて、昨年度我が国では初めての本格的な高次脳機能障害者実態調査を行いました。その結果を踏まえ、まず医療の部分での対応の基礎を作りました。(平成12.5.24) 一方、国(厚生省)の段階でも実態調査をして、来年度の予算編成の資料とする意向を持っていることがわかりました。本会にもさっそく協力の要請がありました。これらの動きが実際に福祉や医療に反映されるに時間が必要だと思いますが、私たちには小さい、小さい火が見えたように思われます。これは高次脳機能障害に注目されて、ご協力いただいた方々のご支援の賜であります。今後このような動きが各自治体や国で始まり大きなうねりになっていくことが望まれます。

 現実に毎日障害を持って生活している障害者本人、それを介護しながら見守っている家族にとっては医療、リハビリの研究はもちろんですが、一日も早く日常的な障害に対応できる施設や福祉サービスが、手帳所持者(身体障害、精神障害)と同じように受けられる方策の実現が待たれます。

 本会も交流会、勉強会が定期的に持てるようになり、また機関紙『こーじ通信』も軌道に乗り、お互いのつながりも広がりを見せるようになってきました。前号では、簡単ですが会計報告をいたしました。また本来でしたら役員の改選時期ですが、軌道に乗り始めた会の運営を考え、もう一期(2年)このまま続けたいと思いますので、ご了承をお願いいたします。なお、世話人会の仕事も増えて手薄となりましたので、 お手伝い願える会員の方は是非ご連絡ください。

 振り返れば、会を立ち上げて今日まで、皆さんのご努力で微力ながらも各方面への働きかけや、要望をして参りました。これからは懸案問題の実現に向かって、皆さんとともに頑張っていきたいと思いますので、ご協力をお願いします。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄

No.03 高次脳機能障害について

 最近、私たちの周辺では社会福祉政策に関するニュースが、新聞、テレビなどで紹介されています。しかし、これは身体障害、知的、精神の手帳を持っている障害者と介護保険の問題が中心になっていて私たちの抱えている高次脳機能障害についての具体的なサービスは依然として生まれていません。

 2、3の新聞の報道も正確ではなく、「高次脳機能障害」に対する取材記者の認識の低さが、社会の公器である新聞やテレビを通して、間違った理解のまま報道しています。こういうことによる一般の誤解は「高次脳機能障害」の認知が遅れている原因の一つかも知れません。

 2月に名古屋で行われた「脳外傷交流セミナー」を報道したNHKのテレビニュースも同じ過ちを犯しています。「脳外傷」であっても、会員の抱える問題の大部分は、後遺症としての「高次脳機能の損傷」による障害すなわち「高次脳機能障害」なのです。

 私たちは会の発足時に、「高次脳機能障害」を後遺症として苦しむ障害者と家族の集まりとして、原因は何であれ、同じ苦しみの人が手を繋いで、助け合いながら、福祉の谷間から少しずつでも光の当たる場所と考えました。だからこそ私たちの会には交通事故をはじめとする脳外傷の方、脳卒中やヘルペスなどによる疾病による方、低酸素障害や手術ミスなどによる方等々、様々な原因の方が会員になられています。そ してみんな同じ「高次脳機能障害」というくくりで、情報交換や国などへの働きかけを続けています。

 発足から一年半が過ぎましたが、国会、厚生省、都、県などとの話し合いの場でもこの考えが間違っていないと確信しました。また今年度、東京都が実施した「高次脳機能障害者」実態調査によって、原因の80%は脳内疾患であることが判ってきています。今後この障害に対して、医療、福祉の両面から早急に温かい手が差し伸べられることを熱望しています。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄

No.02 新しい年を迎えて

 2000年という区切りの年は、私たち「高次脳機能障害者と家族の会」にも、新しい期待の持てる年であって欲しいものです。

 昨年度の東京都の実態調査も結果の出る年明けです。会員の中にも聞き取り調査の対象に「当選?」された方がいらした、との情報も聞いています。この実態調査の持つ影響が、各地方団体に浸透し、また福祉施策に携わる厚生省にも伝わることと思われます。 そういった動きが社会的に関心を呼ぶ一助になればと期待されます。

 昨年12月4日、横浜に「高次脳機能障害・横浜友の会」が設立されました。これから各地にこのような会が設立され、現状の福祉政策の不備、改正に声を上げていくことが、私たちの目的の実現に大きな力となるでしょう。

 この『こーじ通信第2号』が皆さんに届く頃は、松も取れて普段の生活に戻って忙しくなっていると思いますが、少しずつではありますが、私たちの声が、一般社会にも浸透していくことを確信して全員で活動を続けたいと願っています。また交流会や勉強会などを通してよい報告をたくさんできることを今年の目標にして、各方面との折衝や要望も積極的に行っていこうと思っています。

 私たちの会も、いろいろと試行錯誤しながら一年半の活動を続けてきましたが、はたして皆さんのご期待に十分添えているのだろうかと心配しています。なるべく多くの新しい考えが会の運営に反映できるようにしたいと思っていますので、世話人をやって頂ける方は、是非お手伝いください。決してむずかしく考えず気軽に参加して頂けたらと思っています。新年を迎えて、社会全体が変わっていく激流の中に、障害者にも陽の当たるような変革を期待していきましょう。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄

No.01 ニュース発行に際して

 会が設立されて一年が過ぎました。世話人会、交流会と行事を行ってまいりましたが、毎回会員の皆さんの会に対するご期待が大きいことを知らされ、ニュース発行の必要性を痛感しておりました。

 しかし少数の世話人では手も回りかね、ニュースの発刊も思うようにならずにいましたが、ようやくその体制もできました。今までの会の「会の動き」に代わり、ここに第1号をお届けすることができる日がきたことを、感慨深く思います。これを契機として、会員の皆さんのご意見や体験を交換できるようになれば、とても嬉しいことです。

 日々の介護のご苦労や、お一人お一人が得られた情報は、会員相互に貴重なアドバイスになると考えています。

 私は、このニュースが会員の「心のよりどころ」になるように、会員が努力して段々に良いものにしてゆくのが理想だと思っています。我々の目指す「高次脳機能障害者」に日の当たる福祉政策にも、ニュースの充実は大きく影響すると信じます。

 第1号の発刊に際して、会員・関係者の皆さんと力を合わせ、ニュースの充実を期待するとともに、会の活動もより一層努力して参ります。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄