こーじ通信
こーじ通信 No.06~No.10(こーじ通信のご案内)
No.10 NHKに出演して
先日、NHKクローズアップ現代『見落とされた脳卒中後遺症:高次脳機能障害』に出演しました。
このような機会を作っていただけたのは、鈴木代表をはじめとする「高次脳機能障害者と家族の会」のみなさまのおかげと感謝いたします。画面を見れば「あまり上がっていませんでしたね」と言われますが、自分としては短い時間に、しかも生番組の中でどれだけのことを解りやすく言えるか、頭の中がいっぱいでした。みなさまの思いがどこまで伝えられたか不安はありますが、とにかく高次脳機能障害、特に前頭葉症状を世の中の人々に知ってもらう機会の一つにはなったのではないでしょうか。その後、周囲の患者、家族のみなさまからのご意見は、「あのような症状があるのですね」「良くなっていかれた姿を見て心強く思いました。」「家族の苦労は想像しかできませんが、大変ですね」など様々でした。
思い起こせば、10年以上も前に始まった東京都ソーシャルワーカーの有志による地道な高次脳機能障害者の研究活動から、高次脳機能障害者と家族のみなさまが協力してこの会が誕生したわけです。その後の主体的な活動はめざましいものがあり、次々と実行に移され、それが結果に反映されています。
1999年度、東京都の高次脳機能障害者の実態調査、それに続く高次脳機能障害者リハビリテーション等研究会の設置、2001年度の厚生労働省の予算書に初めて「高次脳機能障害」という字が取り上げられ一億円の予算がついたこと等です。
ところで、7~8年前、今回の番組に登場された奥さんと二人で厚生省に、「障害者手帳が取れないために施設への通所が出来ない」などの問題提起に行ったことを思いだしました。このときは組織がないゆえに陳情で終わりましたが、みなさまの組織的な行動により、その実は少しずつ着実に結びつつあります。今後ともますます活動され、さらにこのような組織が全国各地に広まることを期待します。そしてデイサービスなどのような施設を各地に広めていく、および記憶障害などが法律に明記されることを盛り上げていく運動に私も協力していきたいと思います。
高次脳機能障害者と家族の会顧問 桜新町リハビリテーションクリニック
院長 長谷川 幹
No.09 高次脳機能障害者の社会復帰への道のり
これまでの国会、厚生労働省、東京都など各自治体との話の経過から考えると、国としては、国立リハビリセンターを中心にして全国7箇所で、症状、診断、治療、リハビリ等の症例を集めてその実態を研究し、対策を考えることになるとの方向が決まったようです。2月1日に世話人数名で、高次脳機能障害者の要望書を厚生労働大臣に、直接お渡しして話をいたしました。その折り、大臣は2,3年後には制度として確立したいとの意向を話されました。そのあと同5日に、この問題の新しい担当官(障害福祉部企画課の課長補佐)・重藤技官にお会いして、具体的にこの問題について話をしました。
結論的には、今回の予算による前述の研究の結果を待つとのこと、また患者団体が自力で作業所などを作り、補助金をもらって運営したら、などの話がありました。 一方東京都では、高次脳機能障害者の相談窓口である障害福祉担当者に対して、この障害を理解して対応するための講習会を開催しています。障害福祉士会も研修を行ったり、2,3の区でも考える会を開いて関心の高さが示されるようになってきました。また地方にも、高次脳機能障害への動きが見られるようです。これらの状況から高次脳機能障害者に対する福祉施策の必要性が、少しずつではありますが、行政の問題として組み入れられる方向が見えてきました。
しかし現在、障害者を介護をしながら日常生活を送っている私たちにとっては、新しい選択肢ができた訳ではありません。私たちとしては、最低でも既存の福祉施設が現況の障害手帳の有無にかかわらず現実の障害者として利用できるようになって欲しいと願っています。そして高次脳機能障害者の社会復帰への道を探すことも、次の段階へ踏み出していくのに必要なことだと考えます。行政も、研究結果を待つなどと手をこまねいているだけではなく、家族や介護者が願う障害者の社会復帰への思いと、将来の生活設計を創り出すための積極的な試みをして欲しいと思うのは間違っているでしょうか。高次脳機能障害という目に見えない障害のために、障害者と認めない現在の障害福祉政策に、ぜひ血を通わせて欲しいと切望します。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄
No.08 世紀をまたいだ高次脳機能障害
その反面、高次脳機能障害という言葉が、国の予算書に正式に取り上げられた世紀でもあります。前にお知らせしたように、この予算は総額約一億円です。70%は1,000万円づつを7箇所の都道府県で、さらに1,000万円を足した2,000万円にして、高次脳機能障害の医学的な対処方法を研究するために使われます。残りの約3,000万年は、国立リハビリテーション病院(所沢市)に「おける研究費になっています。
私たちは常に高次脳機能障害については、原因が脳疾患であれ、脳外傷であれ同様の後遺症と考えています。医学的に細分化して考えることもあるかも知れませんが、この障害を持つ家族、介護者が障害者とともに要望していることは、これからの将来に希望の持てる福祉政策の早急な施策です。
新世紀になって、国の段階での第一歩が踏み出されたことを、各自治体がどのように行政への組み入れをするのかが今後の問題です。この問題を日本で最初に取り組んだ東京都は、いろいろな行政サービスを考えて先頭に立っていますが、高次脳機能障害の基本的な問題として、障害等級などの認定よりは、障害そのものが社会的に認定されて社会復帰への道が開かれ、そのための福祉制度の樹立が新世紀の初めの出来事であって欲しいと思うのは私だけではないと思います。
今年もみなさんとともに頑張りたいと思います。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄
No.07 東京事務局の任を受けて
ついに21世紀を迎えました。何故ついにというかと思う方が多くおられることでしょう。それは私たちの直面している障害にたいする、福祉政策の改善の方策が具体化しなかったまま新しい世紀に踏み込んだため’ついに’という感じを強くしたからです。
福祉の谷間の中から少しでも光の当たる場所へ!この課題を掲げ発足した「高次脳機能障害者と家族の会」。代表である鈴木さんと歩んだ歳月は、「高次脳機能障害」を後遺症として苦しむ障害者と家族が心を一つに、手を繋いで参りました。発足当時から医療・福祉の両面から温かい手が差し伸べていただけるよう、国会や厚生省、都、県、区などと話し合いの場を持つことも出来ました。
脳疾患、ヘルペス(感染)、低酸素障害、手術ミス、交通事故をはじめとする脳外傷など、様々な原因を持ちながら大きな輪となり訴え続けた2年間です。私たちの会員は全国にわたり参加していきますが、この間、東京都の調査の問い合わせなどに対応するための事務局が必要になり、その任を引き受けることになりました。
健康に自信を持っていた夫が職場で倒れ、断崖から突き落とされたような闘病生活そして経験者しか分からない後遺症「高次脳機能障害」。涙なしでは語ることの出来ない出来事でした。医療現場からの支援や、患者・家族の会の皆さんから暖かい援助や情報などを提供していただき、現在の私たちの生活が成り立ちました。今までに出会った多くの皆さんに感謝でいっぱいです。私には事務局の退任など荷が重すぎるのですが今日まで支えてくださった方々にご恩を返していこうと思い、私の限りある時間を共有していきたいと思います。
「東京事務局」を引き受けるようになり、私どもと同様に大きな悩みを抱えながら生きるご家庭の多いのに驚きました。「頑張れ・・・」と陰ながらエールを送る毎日です。
会の目的の一つである、この障害に対する「社会的認知」も日常における地道な努力によって広がりはじめました。このような動きがうねりとなり、「障害者も健常者と同じ人間として生き、生活できる」バリアのない社会が実現することを願っています。それは決して贅沢ではない自然の人間的感情だと思います。また、私だけでなくみなさんの切なる願いでもあります。
あなたが教えてくれた生命の花と重さを
そして心の大切さを、決して忘れません
ともに新時代の翼となれるよう今日も大切に生きる
高次脳機能障害者と家族の会 東京事務局 大和田貴美子
No.06 概算要求の報を聞いて
9月初め、本会の賛助会員である衆議院議員の井上義久議員の事務所から、来年度の厚生省の予算の中に高次脳機能障害関係分として、約一億円が盛り込まれて概算要求として提出されたとの連絡がありました。その内容は、国立病院を主体とした全国的な障害実態の調査やモデル事業に関する費用です。目前に必要な福祉や充分な医療・リハビリには間に合いませんが、ようやく私たちが訴えてきたことが正式に国の施策に反映される第一歩が始まった、との思いが心の中に浮かんできました。国会議員の先生方への陳情や東京都への要求など、皆さんの努力が報われた結果といえるのではないでしょうか。
しかし、高次脳機能障害者に対する社会的な問題は多岐にわたって残され、早期に解決されなければならないことは言うまでもありません。高次脳機能障害は、一人一人障害の現れ方が違うこと、それに対する医師の判断が学問的統一性のないことが、的確な施策に反映できない大きな原因になっていると言われています。 夏に私たちの会で行った交流会には、医療ソーシャルワーカー(MSW)の方々や現場で障害者と接している方たちも参加され、実情が語られました。彼らが相談を受ける内容は、障害の実態についてだけではなく、病院を出たあとの生活やリハビリを
どうすればよいかなどの、具体的かつ切実なもので、その応対の中で適切な回答ができないし、受け皿として何があるのか考えてしまう、というような問題が出されています。
また、現在ある各作業所などで、高次脳機能障害という目に見えない障害を持つ利用者を受け入れても、なかなか馴染まない面があるようです。高次脳機能障害者が今までどんな思いでいたか、つくづく現在の障害福祉関係の法律が不十分であることを感じます。
高次脳機能障害者が、実際に社会の中で生活していくためには、何が必要なのか、如何にすれば良いのかという問題を、当事者も含めて考えるときではないでしょうか。概算要求として、この障害関連に目を向けられたときに、さらに一歩進んだ対策が欲しいと思うのは私だけではないと思います。
関係各位の更なるご支援によって、障害者の将来に希望の持てる施策が生まれることを期待したいと思います。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 鈴木照雄