こーじ通信

No.77 家族の心理と視点
2014年9月

11月16日、世田谷高次脳機能障害連絡協議会が主催の「高次脳機能障害を理解するための学習会」が開催されました。当事者や家族からいろいろなお話を聞きながら、気持ちを理解し、支援のあり方などを学びました。最初に長谷川幹先生の講義がありましたが、その内容を少しご紹介します。

「家族は当事者の経過を一番知っているが、重症の印象が強くて、それに引きずられて、現状を過小評価してはいないか?」さらに「出来ないから援助しなければと、先取りしてはいないか?」というものです。確かに元気だった頃を知っているので、その頃と比較して、ゆっくりとした回復を待てなかったり、認めなかったりする傾向があるように思います。家族が手を出してしまうことで「当事者の選択、自己決定を奪いかねない」とも言われました。これまでも特に親子の関係でそれを見ることが多く、「手を出さないように」ということは何度も助言してきました。今回失語症の方に登壇していただいたのですが、支援者も「話せない」を前提に、ご本人が話そうとするチャンスを奪っていることに気づかされました。なかなか言葉が出てこないのですが、それを待つ、どうしても出てこない時には質問を変えたり、補ったりするという「間の大切さ」を実践を以って教えられました。「あうんの呼吸は善し悪し」とも言われました。とかく言わなくてもわかる、アイコンタクトだけでも、と言うこともありますが、本人の自己決定を待つことが必要です。そこから本人の意欲が生まれ、「主体性の再構築」ができるのだと、家族のあり方を再度考えさせられました。

 家族会の中には、いろいろな症状の方がいらっしゃいます。当然、自分の家族(当事者)とは違う症状も、見て聞いて学ばさせていただいています。家族だけではなく、当事者同士も交流会などで出会うことで、共感し違いを見ることで、自分の障害をさらに客観視できるのだろうと思います。

 そんな中でちょっと残念なこともあります。ある親の会でお嬢さんが随分回復してきた話をしたら「うちの子も早く高次脳機能障害者と言われたい」と言われたそうです。身体的な障害も重く、回復の話を聞いて咄嗟に出た言葉だったのでしょうが、発言された方は「今後うっかりしたことは言えない、親の会に出ることは止める」と話されました。また事故で障害になった家族が、脳血管障害の方に「介護保険があるから良いわよね」「失語症は高次脳機能障害じゃないんでしょ」などと言ったとのこと。「木を見て森を見ず」とでも言うのでしょうか、自分の家族だけの高次脳機能障害で、他を理解しない発言にちょっと驚かされ、がっかりさせられます。広い視野を持って学び合いたいものです。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子


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