主人が脳出血で倒れてから今年の夏で20年になります。無我夢中の毎日でしたから、もう20年!とも思いますが、世の中の高次脳機能障害に対する状況が変わってきているのを考えると、それだけの年月が過ぎたのだなぁとも思います。我が家の場合は大黒柱が働けなくなったので、私が家計を支えるために、介護福祉士の資格を取りヘルパーの仕事をして生活をしています。高次脳機能障害者の家族という立場と、当事者や家族の生活を支える支援者という立場の両方から、ずっと高次脳機能障害を見てきました。
高次脳機能障害の原因となる疾患の約80%が脳卒中です。中高年の男性に多いとされていましたが、年々その年代が下がってきているように思います。40代、30代、若い人たちの家庭は大変です。未婚であれば両親が介護をし、既婚であれば、子どももまだ小さく、奥さんは介護と子育て、そして仕事をする。若さで乗り切るといっても、その苦労は大変なものです。中には中学生が脳出血でという話を聞きます。低年齢化がそこまで進んでいるのかと、恐ろしくなります。
そういう中、最近は女性が増えてきているなぁという実感があります。中高年男性の病気だと思われていましたが、男性を取り巻く環境のせいだったと思うと、今、社会進出をして男性と同等にバリバリ働いている女性が倒れてもおかしくはないと思います。その上、家庭を持っている主婦であれば、家事や子育てもあり、そのストレスはかなりのものだろうと考えられます。
働き盛りの夫には、知らなかった介護、妻に任せていた家事、子育て等が急に我が身に降りかかってきます。仕事も辞めるわけにはいきません。その上、核家族、介護のために両方の両親や兄弟姉妹が駆けつけて支えています。自分の体調の悪さを我慢しても、娘や嫁の世話をしているお母さん達の姿を見ると、夫が倒れた以上に大変だなぁと思います。
子どもたちも大変です。お母さんの変化をちゃんと理解するのも難しく、今までのような生活ができなくなった不安や不満を抱え、それでも健気に頑張っています。
失語症で「子どもとうまく話せない。」」と嘆き、「学校の提出物を忘れた。」「保護者会でクラス委員にされそうになったけど、自分の状態をうまく説明できない。」などなど、当事者の方々の苦労も聞きます。でも私の知っている彼女たちは、自分たちで仲間同士で集まり、いわゆる「女子会」をしていました。失語症同士でも分かり合い、励まし合っています。女性は強いなぁと思います。逞しい女性たちですが、これからも増えることは間違いないのです。支援を考えなければ・・・。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子