こーじ通信

No.80 65歳の悩み
2015年7月

 またもや我が家の話です。今年の11月で65歳になる夫ですが、11月には現在通っている就労継続B型の施設を退所しなければなりません。高次脳機能障害に特化したデイサービスをお試しで利用しようと思って、早めに介護申請をしました。結果はなんと「要支援1」。倒れた時から、万が一私の方が先に死んでも困らないようにと、自己流ではありますが、かなりハードなリハビリをして身の回りのことはだいぶできるようになってきています。それでも左半身麻痺に加え、記憶障害や左半側空間無視、注意障害、地誌的障害などで日々の生活は大変です。介護保険の認定調査ではなかなか高次脳機能障害が反映されないことは聞いていましたが、現実となって困惑しています。高次脳機能障害に関係する医師や支援者たちには「もっと悪く言わなきゃダメ。」と言われ、自立した生活を目指してきたのに、それでも必要な支援を手に入れるためには「悪く言う」、自己矛盾を感じる毎日です。

 日本の社会保障制度では通常、税による福祉制度よりも保険料の支払いが条件となる保険制度が優先されます。65歳以降は原則として介護保険が適用されますが、介護保険だけでは不十分な場合や、障害固有のニーズに基づくサービスが特に必要と認められる場合に限り、障害者制度の居宅介護等を利用することができます。通所している施設は「それでも当施設は65歳までです。」との返事。

 おりしも『介護予防・日常生活支援総合事業(新総合事業)』がこの4月から114自治体で事業をスタートしました。この新総合事業は、要支援者向けの介護保険サービスのうち訪問介護と通所介護を切り離し、専門職だけではなく地域の住民も担い手となって地域で支えあう仕組みで、3年以内に全国で実施する計画です。最大の狙いは、増え続ける介護費用の抑制と地域住民らの力を活用することで、不足する介護職員が重度者に集中できるようにするというもの。

 また6月初めには、日本創成会議が団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年、全国で約43万人もの人たちが、必要な介護を受けられない「介護難民」となる、と発表しました。そして「危機回避戦略」では、東京圏の高齢化対策の一つとして、ベッド数に余裕があり、態勢的に受け入れ可能な地方への移住を提言しています。あれっ?「住み慣れた地域で自分らしい生活を」というのが介護保険の理念ではなかったかしら?
 夫が倒れて試行錯誤の時に、当会の設立に関わりここまで来ましたが、今またこんな社会情勢に直面。また新たな活動を始めなくてはならないのか・・・「65歳の悩み」に続きます。


高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子


こーじ通信目次へ