7月5日(日)、日本教育会館一ツ橋ホールで開催された「共生社会を創る愛の基金」第4回シンポジウム“「罪に問われた障がい者」の支援”に行ってきました。この基金は、「郵便不正冤罪事件」で164日間勾留されたのち無罪が確定した村木厚子さん(厚生労働事務次官)が、国家賠償請求で得たお金で立ち上げられたものです。村木さんは「取り調べで自分の言い分をしっかり貫くこと、公判という場で自分の意見をきちんと述べることは想像以上に難しいことを実感しました。障がいを持たない私でも、こんなに悪戦苦闘したことを思い返すと、知的な障がいのある人をはじめ、コミュニケーションに障がいがある人が、きちんとした取り調べや裁判を受けることができているのだろうか、そんなことが不安になりました。」(全文はhttp://www.airinkai.or.jp/ainokikin/index.html)と、基金立ち上げの動機を語られています。
2007年に東京高次脳機能障害協議会(TKK この時はまだ任意団体)が開催したシンポジウムに、ちょうど来日していたオーストラリアのBIAQ(Brain Injury Association Queensland:クイーンズランド脳損傷協会) 代表のジョン・ディッキンソン氏を招いて講演をしていただきました。その打合せをした時に、「刑務所の中の人たちの救援活動」というのが結構大きな仕事になっている話を聞きました。その頃私たちは、「高次脳機能障害」の周知啓発に力を入れており、支援の輪を広げる活動をしていたので、「刑務所?」という感じで、そこは今の日本にはまだ、とその話は最小限にしていただいた経緯があります。そのことはずっと私の中で「課題」として残っており、事件など折あるごとに、脳損傷者と犯罪、ということが引っかかっていました。いつかは手をつけなければならないテーマだと。
「高次脳機能障害」という言葉は出てきませんでしたが「発達障害」「知的障害」「精神障害」の方々が、生活のしづらさ故に犯罪に手を染めてしまったり、犯罪に巻き込まれてしまうことの多さ、処遇のあり方など、その理解や支援が不十分であることを知りました。
基金による調査研究事業、助成事業の報告に加え、村木さん、堀江貴文さん、浜井浩一さん(龍谷大学法科大学院教授)の「鼎談:刑務所で何が起こっているのか」では、検察の話のつくり方などの話が出て、誰でも巻き込まれる可能性があることの恐ろしさなど、それはそれでとても興味深い話でした。刑務所を出る時の支援もとても貧弱で、再犯が予想されるものです。負の連鎖を食い止めるにも、社会が変わらなければ、障害の理解と支援の輪の拡大を訴えなければ、世の中動かないなぁと強く感じました。今の私に何ができるのだろうか、と考えさせられる貴重な体験でした。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子