こーじ通信

No.83 地域包括ケアシステム
2016年2月

 国は、団塊の世代(約800万人)が後期高齢者となる2025年(平成37年)に向けて、高齢者が尊厳を保ちながら、重度な要介護状態となっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。各市区町村は、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じ、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じたシステムを構築していくものとされています。

 これは介護保険の中で語られていますが、私たち障害者や家族にとっては、地域でケアが必要なのは「高齢者に限らない」と思っています。障害者のみならず、生きづらさを抱えた若者たち、子育て家庭、生活困窮者など、地域にはいろいろな人たちが共生しているのです。

 私の住んでいる世田谷区では、平成26年3月には、世田谷区地域保健医療福祉総合計画を策定し、地域包括ケアシステムの対象は高齢者だけではなく、障害者、子育て家庭、生きづらさを抱えた若者、生活困窮者など対象を広く捉え、また支援を必要とする人だけのものでなく、元気な高齢者や学生、主婦、NPOや活動団体など幅広い区民参加のもとで地域包括ケアシステムを構築しようと動き出しています。

 2月13日に「第4回世田谷の福祉をとことん語ろう」というフォーラムを開催しました。私は実行委員の一人で1回目から関わり、区民との協働、当事者たちの声を聴き、自分たちで何ができるのかをグループワークで一緒に考えて、議論を重ねてきました。今回も100人近い人が集まり、区の進捗状況を聞き、それでもよく見えてこない「地域包括」を「地域まるごとケア」としてどう実現していくかを考えました。世田谷では、身近な出張所・まちづくりセンターの中に、あんしんすこやかセンターと社会福祉協議会が入り、この三者が連携して相談支援体制を準備していますが、そこに区民がどう関わり、どう参画できるか。高齢者福祉、障害者福祉の縦割りをどう横にぶち抜くか、行政としても力量を試される時かもしれません。

 私たちは国や市区町村の制度がどうであれ、地域に生きるものとして「まるごとケア」を実践していくしかないかと思います。当会顧問の長谷川幹さんが、相談窓口に当事者・家族がピアカウンセルとして入ることを提案しました。失語症会話パートナーも、地域での活動の場はたくさんあると思います。一人一人が自分でできることを地域で実践することで「地域まるごとケア」が見えてくるでしょう。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子


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