2016年4月1日から「障害者差別解消法」が施行されました。この法律は、障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会をつくることを目指しています。
2006(H18)年12月の国連総会本会議で「障害者権利条約」が採択され、日本は2007年9月に国連で署名しました。その批准のためには国内法の見直しが必要で、2009年に内閣に
「障がい者制度改革推進本部」を設置され、この時に「障害者に関することは障害者を抜きにして決めない」と宣言されました。その後、多くの審議や検討を経て2016年6月に国会で成立、2014年に障害者権利条約を批准しました。
国は差別解消に関する施策の基本的な方向、行政機関等及び事業者が講ずべき措置に関する基本的な事項等を定めることとしています。差別解消のための措置として、「差別的取扱いの禁止」「合理的配慮不提供の禁止」を挙げています。
「不当な差別的取扱い(行政機関、民間事業者ともに禁止)」とは、正当な理由なく、問題となる事務・事業について、関係する諸事情が同じであるにも関わらず、障害者でないものより障害者を不利に扱うこと。「合理的な配慮の提供(行政機関は法的義務、民間事業者は努力義務)」は障害者等から、何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、負担になりすぎない範囲で、社会的障害を取り除くために必要で合理的な配慮を行うこと。(「せたがや」より)
しかし何が差別なのか、合理的配慮なのかという定義はありません。同じことを差別と感じる人、感じない人、受け止め方の違いを大事にすることも大切です。
私の住む世田谷区では、この法律の施行にあたって基本方針の策定と合わせて「職員対応要領」を定めました。この策定にあたり、昨年度、高次脳機能障害の当事者団体として担当部署からのヒアリングがありました。高次脳機能障害のために、日常生活で不当な差別的取扱いを受けた事例、合理的配慮があった事例をお伝えしました。
「世田谷区職員向け 障害を理由とする差別を解消するためのガイドブック【第1版】」(3月発行)にはこの制度についての解説に加え、障害特性に応じた対応が書かれており、その中に高次脳機能障害についても明記されています。保坂世田谷区長は「障害のある方から声があがる前に、あらかじめできることを積極的に行うことが大事。」と発言されています。これからみんなで積み上げて、この法律の実質的な効果を作っていくことが必要だと思います。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子