こーじ通信

No.85 自立・自己決定とは?
2016年6月

 6月11日、12日は一般社団法人日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会の東京大会が開催されました。任意団体だった「脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会」は、昨年10月に「一般社団法人」となり、理念やそれまでの活動を引き継ぎ、さらに関連団体との協働で事業展開をしていく方針です。

 この東京大会は第6回目に当たります。この学会は発足当初から、脳損傷者を支援するという一方向ではなく、医療・保健・福祉関係者、市民が脳損傷者から学ぶことも多く、双方向で支え合う関係性がコミュニティの中に作られていくこと、そういうコミュニティの構築を目指していました。今回は実行委員約30名のうち3分の1が当事者という、まさに同じ場で共に議論するということを実践していました。2日間のプログラムも、すべて当事者が登壇し、司会もして、多くのことを伝えてくれました。そのエネルギーと発せられたメッセージの内容に圧倒された2日間でした。特に「自立と依存」「自立と自己決定」についてのセッションは、当事者だからこそ話せる内容で、その後もずっと考えさせられています。

 「発話困難な重度障害者」である莉本亜沙子さん(中学1年生の時の交通事故で重度身体障害者となり、今は世田谷で1人暮らし。会話にヘッド・スティックを使用)、天畠大輔さん(14歳の時の医療ミスにより、四肢麻痺・発話障害・視覚障害を負い、重度障害者となる。現在立命館大学大学院で「障がい者とコミュニケーション」の研究、論文作成中)に、熊谷信一郎さん(小児科医、新生児仮死の後遺症で脳性麻痺、車いす生活。現在は東京大学先端科学技術研究センター准教授)が加わり、司会に北山晴一さん(立命館大学名誉教授)田中節子さん(作業療法士)の5人によるセッションは、実に内容の濃いものでした。

 お2人は依存しなければならない生活の中で、「特定の人に依存する怖さ(相手に悪気がなくても支配・非支配の構造が生じる)」を訴え、「自己決定することが自立か?日常生活では簡単ではない。」と話されます。論文作成中の天畠さんは「自分と多くの介助者・通訳者で自己表出をしており、博士論文を書いている身で、どこまでが自己決定なのか。」という私たちが考えてもみなかったアイデンティティ論を話されていました。簡単に「自立」とか「自己決定」などと口に出来ないような、大きな課題を突き付けられたような気がしています。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子


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