1月22日に私が代表をしているもう一つの団体、世田谷高次脳機能障害連絡協議会が主催する「春の音コンサートⅩ」が開催されました。この日のために練習を重ねてきた当事者の方々が、その成果を活き活きと発表され、会場は熱気と感動に包まれました。
その一人、黒田真史さんは18歳の時に交通事故に遭い、医師から「植物人間状態を覚悟してください。」と宣告されたそうです。ケアセンターふらっととの出会いからリハビリに取り組み、今では電動車椅子で通所しています。コミュニケーションは、トーキングエイドという機械を使って行っています。この日はヘルパーさんに話したことを、是非みんなに伝えてと言われ、詩にし、支援者の方に代読してもらいました。
題名は「起きられない朝 リアルモーニング」抜粋でご紹介します。
「夢の中で楽しく友と遊んでいた。朝目覚め、さあ起きようと思ったとき体が動かない!何故だ?寝ぼけながらも考える。あぁそうだった、僕は事故にあったんだ。もう体は自分では動かせないんだ。「助けて」っていう言葉すら出ないんだ。溢れる涙。現実を実感するのが、こんな朝の繰り返し。あがいてもがいて、涙して。こんな涙の朝を何度迎えただろう。そんな時、嫌な顔一つせずに慰めてくれる看護師。それなのにその言葉に腹を立てしまった。僕の気持なんかわかるか!「障害の受容」ってよく言うけれど、自分の障害を信じたくなかったのかもしれない。動けない自分、話せない自分、離れていった友たち、これから僕はどうなってしまうのだろう。(以下省略)」
「障害受容」という言葉を支援者は簡単に使ってしまいますが、本人や家族が障害を理解し、現実を受け入れ、新しい生き方に向かっていくということはそんなに簡単ではないことを、改めて心に刻んだ詩でした。ある男の子は「目が覚めた時、何だか判らず、何かの罰ゲームか?って思ったよ。」と語ってくれました。またある人は「一生懸命右手を動かそうと頑張っているのに、利き手交換をしましょうって言われて頭来た!」と言います。専門家たちは何人も同じような障害者を見てきているから、障害状態やその先のことも、ある程度見通しが利くのかもしれません。「介入」などという言葉で、当事者や家族と接してしまうかもしれません。「寄り添う」ということの難しさを痛感させられます。
家族も障害の理解をしているにもかかわらず、本人に対して傷つけてしまうことが多々あります。一番辛い本人にどこまで寄り添えるのか、寄り添っているのか、今一度振り返ってみたいです。そして本人と共につらいご家族に、少しでも力になれたらと、さらなる家族会の活動に思いを巡らします。
高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子