こーじ通信

No.75 切れ目のない支援制度とは
2015年4月

 高次脳機能障害と認知症の違いは?という質問は、家族会の中ではよくあります。その問いには「高次脳機能障害は、ある日突然の脳卒中や事故などの原因で出現する症状であり、再発など新たな病巣が出現しなければ進行しない。認知症は脳の神経細胞が徐々に壊れていく進行性の病気である。」と医師たちは説明してくださいます。しかし認知症の研修に出ると、その原因は「アルツハイマー病」と「脳血管性認知症」が多く、「脳血管性認知症」は「徐々に悪化する」と言われます。そして高次脳機能障害のリハビリには触れず、「早期発見」「予防」が中心です。

 日本の高齢化はさらに進み、認知症は今や500万人と言われており、認知症対策が重要課題となっています。厚生労働省は団塊の世代が75歳以上になる2025年(平成37年)を目途に、重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを、人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される、地域包括ケアシステムの構築を打ち出しています。内容は「高齢者が」と謳っているものの、その対策は、私たち家族会が要望しているものと似ています。

 当会は原因を問わず、後遺症としての高次脳機能障害というところで、その支援を訴えてきました。会員には、脳卒中も外傷も脳炎や低酸素脳症、脳腫瘍など、いろいろな原因の方々がいらっしゃいます。しかし日本の社会福祉制度は、40歳以上(第2号被保険者)は介護保険制度、40歳以下は障害者総合支援法、さらに「身体障害者福祉法」、「知的障害者福祉法」「精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)」と縦割りにします。人によって受けられるサービスが違い、谷間にいる人たちがいます。高次脳機能障害者は長い時間をかけてゆっくりと改善されるといいます。その間の関連機関との連携と、継続した支援が大切とも言われます。それなのに、ステージによって制度が変わります。18歳まで、40歳、65歳で受けられるサービスや保障が変わります。常々訴えていますが、人間の一生を支えていくなら、その縦割りは不自由です。年齢制限や原因にかかわらず、その人が「生活しづらい」ことを支援していく制度であってほしいと思います。
 先日傍聴した高次脳機能障害支援コーディネーター全国会議でも、子どもの高次脳機能障害が語られ、教育機関との連携の問題が語られました。療育分野では「他の障害より特に難しいと感じていない。」と話され、また「発達障害」と症状や対応の共通点があることも発表されました。障害、病気、高齢などそれぞれ独自の支援も必要かと思いますが、共通のものがあれば、お互いに乗り入れて利用できるようにすれば、経済的にも効率的かと思うのですが。

高次脳機能障害者と家族の会 代表 今井雅子


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