こーじ通信

No.98 高次脳機能障害とともに生きる
2019年6月

 6月18日に「認知症施策推進大綱」が関係閣僚会議で決定されました。認知症の人が暮らしやすい社会を目指す従来方針の「共生」とともに、「予防」を二本柱に掲げました。認知症を「誰もがなりうる」として、予防については「認知症にならない」ではなく「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」と定義しました。5月の素案では「70代で認知症の人の割合を10年間で1割減らす」という数値目標を掲げていましたが、認知症の人たちからの「認知症になるのは予防の努力が足りないからだ、認知症になった人が落第者になって自信を無くしてしまう」などの反発を受け、取り下げて「参考値」に格下げにしました。
 やったー!当事者の声は大きい!これを読んだ私の最初の感想です。『認知症とともに生きる希望宣言』を出され、各地で活動を広げられている一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループのバイタリティのある行動に感服しています。
 以前、日本脳卒中協会や友の会の方とお話をした時に「予防」を力説されていたことを思い出しました。「再発」が多いのでとの説明でしたが、その頃「リハビリ」に取り組み回復を願っていた私たちにとっては、「再発させない」という視点は医師の立場?「再発」したくはないけれど、そこだけ?と思い、同じ脳を損傷したものとして何となく違和感を感じました。
 認知症予防に対する当事者の方々の発言のように、脳血管障害の人には「生活習慣病の予防を怠ったから」という自己責任論が付いて回ります。家族でさえ、そう思ってしまうこともありました。「あんな生活していたから」と。でも原因はそれだけではありません。「予防」をしていたら大丈夫、という保証などどこにもありません。たとえ健康管理ができていなかったとしても、「落第者」「自己管理ができなかったダメな人」というようなことにしてはならないと思います。前号にも書きましたが、「高次脳機能障害のある方」には「ない」部分が多くあるのですから、人としての尊厳を大切にし、できる力を活かして社会の一員として共に暮らしていけるようになって欲しいと思います。家族や支援者も、その方が「高次脳機能障害とともに生きる」というところに寄り添って、まだまだやれることを一緒に見つけて、共に楽しみ、感動を共有する生活をしたいと思います。


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